中耳炎の鼓膜切開について
「鼓膜切開とは」
鼓膜切開とは、滲出性中耳炎や急性中耳炎の治療のために、鼓膜を切開し、たまっている滲出液を排出する処置です。
この治療は、中耳炎の症状が抗生物質などのお薬で良くならない場合に行うことが多い処置(手術)です。
治療の流れとしては、まず、切開する前に鼓膜に麻酔液を浸した綿花を鼓膜に接触させます。
次に専用の鼓膜切開刀を用いて、鼓膜に穴をあけます。
鼓膜に穴を開けるというと心配になられる方が多いですが、鼓膜は再生力が強いため何度も繰り返し実施しても心配ありません。
鼓膜切開を行い、滲出液(鼓膜の中に溜まっていた液体)を抜くと聞こえが改善します。
また、それまで滲出液で満たされていた中耳腔に空気が入るため、中耳腔の粘膜を正常な状態に戻し、再び滲出液が溜まることを防ぐことになります。
また、鼓膜切開により急性中耳炎で圧迫されていた鼓膜が正常に戻るため、すぐに痛みが消失します
鼓膜切開の穴は、通常、数日から1週間程度で閉じていきます。穴が閉じて、中耳炎も治れば、治療終了となります。
しかし、小さな子供さんの場合、穴が閉じると、再び中耳炎が悪化することがあります。
鼓膜切開を行っても中耳炎がなかなか完治しない場合や、一旦治っても、何回も中耳炎を繰り返すという場合には、鼓膜に換気チューブを挿入する治療が必要になります。
「鼓膜切開後の注意点(日常生活の注意点)」
- 切開当日はお風呂に入れますか?
- 入っていただいて構いません。しかし、あまり体を温めすぎず、軽く入る程度にして下さい。また、シャワーで頭を洗うこともできますが耳に水が入らないように気をつけて下さい。
- 切開当日は運動をしてもいいですか?
- 運動はなるべくしないようにしてください。また切開当日は、プールには入ってはいけません。
その後は、発熱や耳痛などの症状がなければ通園、通学しても問題ありません。 - 耳垂れに血液が混ざっているのですが大丈夫ですか?
- 鼓膜切開を行った後の数日間は、血液混じりの耳垂れが続くことがあります。
これは、切開をした穴から膿が流れ出ているだけですので問題はありません。
しっかりと耳垂れを拭きとってあげてください。
中耳炎の鼓膜チューブ挿入術
「鼓膜チューブ留置療法とは」
鼓膜チューブ挿入術は滲出性中耳炎の治りが悪い場合や、急性中耳炎を何回も繰り返してその度に鼓膜切開をしなければならなくなった場合に行います。
鼓膜切開を行った後、直径1~2mmのチューブを切開した穴に挿入します。チューブは数ヶ月から長いもので数年挿入しておきます。
チューブを挿入することにより、チューブの小さな穴から空気が入り、それによって耳の中が乾燥して炎症が起こりにくくなります。
また、チューブを入れておくと、チューブの穴が空気穴の役目をして、耳の中に溜まった膿が耳管を通して鼻に出やすくなります。そのため、中に溜まっていた分泌液がなくなり、聞こえも良くなります。
「チューブ挿入後の注意点(日常生活の注意点)」
- チューブが入っている間、水泳はしてもいいですか?
- 深くもぐったり、飛びこんだりすると、チューブの穴を通って水が耳の奥に入っていく可能性がありますので、潜ったり、飛び込んだりはしないようにしてください。耳栓をして、耳を覆うように水泳キャップをきちんとかぶって水泳を行ってください。
また、入浴時にも耳に水が入らないようにしてください。多少入る程度なら構いません。 - チューブが入っている間は、耳鼻科に通った方がいいのですか?
- 耳の状態を確認する必要がありますので、医師の指示をしっかりと守り、通院をお願いいたします。
- チューブが抜けたあと、鼓膜は治りますか?
- チューブが抜けたあと鼓膜の穴は自然に閉じていきます。しかし、まれに鼓膜に小さな穴が残ることがあります。その場合、成長してから穴を閉じる処置(手術)をすることがあります。